千舟町のマンション
Photo:MIMOZA photograph
※最後から3枚を除く
愛媛県松山市千舟町に建つマンションの一室をリノベーションする計画です。
クライアントの部屋は高層階の角部屋で、日当たりや風通しは良好。しかし、階高が低く天井や床下の懐に余裕がないうえに、給排水設備の接続位置がすべて床上だったため、各室の配置は大きく変えず、極力既存を活かすかたちで計画を進めていきました。
敷地は中心市街地にあるため、周囲には同規模の建物が建ち並び、マンション内の他の部屋のほとんどが、高層階にも関わらず窓やカーテンを閉め切っている状態でした。そこで、外部に面した水まわりや寝室等、使用頻度の少ない部屋の入口にガラスや有孔ボード等の様々な透過率をもつ材料を用いることによって、それら「部屋」自体を「カーテン」や「ブラインド」、「内窓」のように外部環境をコントロールするものとして扱い、家族が多くの時間を過ごすリビングの「緩衝空間」として機能させています。それによって、リビングのプライバシーを確保しながら眺望や通風、採光も確保し、周囲の音や温熱環境をコントロールすることで居住性を高めています。
仕上げに関しては、クライアントが使用する予定の家具をもとに、それに合わせて逆算していくようなかたちで一緒に決めていきました。極々緩やかな凹凸や色むらをもつ漆喰壁や特殊塗装、空気の流れる方向に沿うように配置されたリブ天井の陰影等、「緩衝空間」のようにどこか「奥行き」を感じさせるようなものを選定しています。
初めて部屋を訪れた際に感じた、窓を開けた瞬間の光や風の心地良さ、高層階ならではの見事な眺望。
部屋のインテリアやかたちを劇的に変更することでもたらされる視覚的な変化をリノベーションの主題とするのではなく、その場を流れる光や風、感覚的に誰にとっても気持ちが良いと感じられるようなものを大切にしながら終始設計しました。
BEFORE
PROCESS